▼ 花押とサイン
花押は書判(かきはん)ともいわれ、自分の名を草書のように書き崩して花のように書いた文字のことで、普通の文字に比べデザイン化され形様化されたものをいう。
唐代の中国に由来し、自署の略式あるいは代用と考えられた。我国の武家社会ではサインより軽礼とされ、一般に文書に信憑性と証拠能力を付与するものとみなされた。江戸時代になると印章の普及とともに花押の使用と頻度が減少し、明治政府の太政官布告によって諸証書にはその使用が禁止され実印を用いることとなったのである。
やや前置きが長くなったが、オールドノリタケの作品にはサインではなく、この花押が用いられているものがある。書状や諸証書ではごく普通に見られるこの花押も陶磁器に使用されるのは異例と言える。一般のサインに比べその作例も大変少ないので詳しいことは判らないが、唯一この花押だけが確認されている。帝展の無鑑査級レベルの画家たちに与えられた特権とも推測され、画工師、木村義一のものとする見解もある。
一方、サインには展示品のように外国人の名前らしきものもあり、F.Honda、 K..Sinoki
、S.Kimuraなどのサインをよく目にするが、現在20名以上の名前が確認されている。(詳しくはオールドノリタケ コレクターズガイド P
32を参照されたい)作品にサインを記す習しがなかった当時を考えると単なる絵付け職人のレベルを越えた芸術家としての技量を示す証左といえるだろう。
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