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* 盛り上げ (MORIAGE)について

ニッポンもの(Nippon Porcelain) とりわけオールドノリタケを代表する技法の1つである。古くは宋時代の中国や17世紀のイギリスなどにもあったようであるが、近代になって広く知られるところとなったのはオールドノリタケやロイヤルモリエ、島村などをはじめとする瀬戸の陶磁器群によるところが大きい。今やMORIAGEは英語にまでなってしまっている。

 生地の表面にイッチン(一陳)と呼ばれるチューブ状の袋で粘土と水を混ぜた泥しょうを入れて握力加減で絞り出し、線や点などを装飾する技法である。ケーキ作りの職人がケーキを生クリームでデコレーションするときの手法に大変良く似ている。これらは併用されオールドノリタケ独自の魅力を醸し出している。

 この技法の特徴として、器の表面を立体的に装飾するだけでなく、盛り上げにしばしば見られる貫入が草花文様などでは葉脈の線として生かされていることである。陶磁器の世界では一般に欠陥とされる貫入を装飾の一部に取り入れ表現する高度なテクニックにオールドノリタケの虜になった人も少なくないのではないだろうか?

 この盛り上げ技法をパターン別に見れば、草花文様 、Pine Corn 、Woodland Pattern、 Galle Pattern 、Dragon Patternなどがその代表的なパターンとして知られている。 Dragon Patternはノリタケ以外のメーカーの作品が非常に多く出回っており、稚拙な贋作も散見されるため、収集にあたってはその点を重々留意すべきである。本サイトでは上記のパターンに属さないものを 全てGeneralとして分類し、またWedgwood Pattern は 10) Wedgwood Seriesとして独立させた。



* Pine Corn Pattern

モリアゲの特徴を遺憾なく発揮したオールドノリタケを代表するシリーズである。Pine Corn とは松ぼっくりのことであるが、葉の形状は本来の松のそれとは程遠いのが興味深い。












  

  

    







  

  

  





  









  






  

  





  





* 贋作と偽物について ( Fake & Reproduction )

オールドノリタケには贋作が非常に少ない。これはオールドノリタケの最大の特徴の1つであり魅力なのだが、意外とこの事実は知られていない。特にデコアイテムに限っては未だ一点たりとも確認されていないことは驚愕に値する。
( 『オールドノリタケ アールデコ・ボーンチャイナ』 木村一彦・葵航太郎著 トンボ出版 P63参照 )

ここ数年で急激に再評価され、今でこそ高級西洋磁器に肩を並べるにまでなったが、長い間、日の目をを見ずに忘れ去られていたため、少なくともここ数年までは幸か不幸か贋作の対象になり得なかったためである。確かに同じ労とコストをかけるのなら、マイセンを始めとする西洋高級磁器のコピーに走るのが生産性のコストから考えても得策であったことは言うまでもない。

周知の通り世界で最もコピーされているのは、間違いなくマイセンであり、真正品より贋造品の方が多いセーブル、そしてわが国の市場で流通している何と9割までもが贋作であるウイーン窯等は本物に巡り会うことのほうが稀なくらいである。これらの窯は正に贋作との闘いに明け暮れたのであるが、マイセンとドレスデンの諸工房との裁判の歴史は有名であり、そこに如何に西洋磁器に贋作が多いかを垣間見ることができる。ところがこれらの諸窯に比べオールドノリタケのそれは皆無と言っても過言ではない。桁違いに少ないのである。わが国における無数の西洋磁器の贋作の山は、その資料となる総合的な書籍や海外資料の翻訳版等の普及が全くなかったという事情に起因しており、一方、INCC( International Nippon Collector's Club )のホームページのReproductionAlert(※参照) でも掲載されているようにオールドノリタケは贋作、偽物の両者においてすでに確認作業がなされており、その点最も安心して手にすることのできるコレクターズアイテムと言えよう。

http://www.nipponcollectorsclub.com/reprod.html

にも拘わらず、ヤフーなどのネットオークションで『当方は贋作は一切扱っておりません。』といったフレーズをよく見かけるが、恰も贋作が氾濫している中で唯一正当な商売をしているかのようである。しかし残念ながら、素人や初心者にこのような誤解を伴った情報を提供することによって、要らぬ不信感や不安を持たせ、延いてはアンティーク業界全体に暗いイメージを作り、コレクターや愛好家の裾野を一般にまで広げることへの大きな障壁となっていることを理解すべきである。勿論、骨董祭等で偽物をつかまされたりする場合もあるが、これは売り手の無知によるところが多い。中にはオールドノリタケでないことを知っていながら偽って売りに出している悪質なケースもあるが、そのような場合はご一報くだされば幸いである。

本来、贋作と偽物は異なり、前者は真正品そっくりに真似てそれと並べてもわからない程精巧に作られているものであり、後者はスタイルや雰囲気を真似ているだけで実際の真正品とは明らかに違いがあり判別できるものを言う。オールドノリタケには贋作はごく一部のニッポンものに中国製の精妙に刻印された裏印を持つ贋作が散見されるが、稚拙な作風、磁質、器の重さや厚さ等から一見して容易に判別できる代物である。勿論オールドノリタケのとてつもなく膨大な生産量を考えるとこれらは無に等しい数である。一方、偽物は戦前から僅かながら作られており、贋作に比べると数も多いが、全くの素人でも判別のつくものが殆んどでマイセンの贋作コレクターでも100パーセント見分けがつく。

オールドノリタケもマイセンやセーブルと同様に贋作への警告がなされるようになったのも高級磁器の勲章と捉えるべきなのだろうか?あるいは再評価が高まる対象の言わば宿命なのかもしれない。