▼ ウースターのファンパターンの C&S (ドクター・ウオール期) ▲
ウースターの伊万里錦手(金襴手)の写しである。
西洋の東洋文化に対する憧れや渇望がこの作品に見事に集約される。
伊万里や柿右衛門の文様はイギリスの磁器の黎明期において大変流行した。カップの裏面の[大 明 年]は伊万里錦手の大明萬暦年製の銘を模したものである。当時はいかに伊万里などの東洋の磁器を忠実に真似るかが高級磁器への至上命題であった。
▼ 南京カーゴのティーボウル
これは知る人ぞ知る1984年のクリスティーズオークション、南京カーゴ
(The Nanking Cargo Auction ) に出展された清のティーボウルである。1752年に中国(清)から大量の陶磁器を載せオランダへ向かう途中難破したオランダ東インド会社(VOC)の貿易船ヘダーマルセン号が、1982年海底から引き上げられられたのである。
このタイムカプセルから出た何と15万点もの陶磁器に12万人が殺到し、即日26億円を完売したというからクリスティーズのオークション史上最もポピュラーなものだったに違いない。作品の出所が極めて明らかなことに加え、歴史のロマンを掻き立てる想いがこのオークションを大成功へと導いたのだろう。
この中国のティーボウルこそ、現代の西洋磁器のCup
& Saucerのルーツである。
▼ Rosenthale
ローゼンタールのユニークなデザインや造形には定評がある。このC&Sにはハイリングハンドルの持つアンピール様式の雰囲気がヌーボーを、そしてコンパスで描いたような人工的な朱色のカーブ文様はア−ルデコをそれぞれ主張しており、優雅さと斬新さが大胆に絡み合った美しい姿を特徴としている。
▼ Shelley
アールデコのC&Sではオールドノリタケをはじめ、ロイヤルドルトンやロイヤルウースターなどにも秀作が見られるが、このシェリーのカップはハンドルなどの装飾を極限にまで簡素化し、文様を幾何学的にとらえアールデコの特徴を遺憾なく発揮している。
▼ 竹久夢二 『黄色い着物を着た女』
『大正の歌麿』とも『放浪の抒情画家』とも形容される夢二は、日本のグラフィックアートの先駆者として明治末から昭和初期にかけて一世を風靡した詩画人である。浮世絵やアールヌーボー様式を取り入れた詩情豊かな作風と独自の夢二式美人画に彼が愛した彦乃をはじめとする女性像を投影し、女性の内面にある隠された哀しみを託したのである。本品は恐らく本邦初公開ではなかろうか?彼の代表作「立田姫」や「黒船屋」に勝るとも劣らぬ傑作で、数ある作品の中でも一際彼女は眉目秀麗である。
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