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さて、展覧会であるが是非とも展観しようと思いながら日ごろの雑事に紛れ今になっ
てしまった。
先日家内と大阪市立美術館へ足を運んだが天王寺公園界隈も昔と違って整備され環境
も随分と良くなった。
閑散とした公園界隈とうって変わって館内は平日だというのに大変な人である。
いまだにその大きな感動と余韻が心に響き脳裏に焼きついて離れない。
招待券だけではその内容が十分に把握できなかったため、正直のところこれ程までに
凄い展覧会だとは思いもよらなかった。長い沈黙を破ってやっとのことでこのサイト
を更新するのだがオールドノリタケ・ファンならずとも陶磁器ファンであればこの展
覧会
は必見中の必見との思いから是非ともまず最初に紹介したい。
もうすでに7月から8月にかけて東京国立博物館で開催されたため、関東地方の方は
ご覧になった方も随分おられると思うが、11月下旬まで大阪市立美術館、
来年1月から3月初旬まで名古屋市博物館でも催される。 |
高浮彫蓮に白鷺翡翠図花瓶 宮川香山(初代) |
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この展覧会は19世紀の万国博覧会の美の側面を日本工芸及び西洋美術の観点から
探ろうとするもので、19世紀後半の世界の万国博に出品された国内外の多くの著名な
主要美術館、博物館から500点を超える至高の美を壮大なスケールで展観している。
第T部と第U部に分かれ、第T部では「万国博覧会―東西が出会った」と 「工芸をARTに―20世紀工芸への道」の二つの章で万博と日本の近代工芸に迫る。
前者は幕末から明治前期の万博を通して、東西の出会いと交流の中でわが国の
伝統工芸がどのように変容していくかを考察。また、西洋におけるジャポニズムの隆
盛 についても触れている。後者は明治後期の万博を中心に工芸に与えられる役割の変化
と、 そうした時代の中で新しい動きを始めようとする工芸家たちに迫る。 その内容たるや、まさに言葉を失うほどの美術工芸の至芸の極みであり、圧倒的な美
の洪水に我を忘れるほどの大きな感動と驚きを覚えるものであった。 第U部では万博という存在が西洋美術の中に占めた位置を検証し、5度にわたるパリ 万博に視座を置き、万博と主として西洋絵画の展開との関わりを問い直そうとするも のである。 この種のものに2000年に開催された京都国立博物館と愛知県陶磁資料館主催の 〔万国博覧会と近代陶芸の黎明展〕という立派な展覧会があったが、 比較にならぬ展示内容とその規模は恐らく向こう数十年は国内では開催不可能 ではないかと思える。 |
八手葉大花瓶 エルンスト・ブシェール・リュネビル社 |
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ここでは本サイトの趣旨から、主に第T部の陶磁などのわが国の伝統工芸を中心にス
ポットを当て概観したい。 1851年に始まるロンドンでの万博を機に西洋は各国が競い合う「博覧会の時代」に突
入したのだが、日本も1873年のウィーン万博に初めて国家として参加し、 わが国の誇りと威信をかけて最高の美術工芸を出品するのである。
それらは蒔絵、金工、漆工、染付け、有田焼、薩摩焼などの陶磁器、七宝、染色など
実に多岐に及ぶ。 特に陶磁では2m近い有田染付大花瓶や川本桝吉(初代)、宮川香山、藪明山、香蘭
社などの逸品はまさに圧巻。 |
] 褐釉蟹貼付台鉢 宮川香山 |
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また、金工家の鈴木長吉の「十二羽の鷹」は見る者の目を奪う。 |
どれもこれも甲乙つけがたい逸品、名作のオンパレードである。 オールドノリタケは皆無であったが、その主なルーツである河原徳立の瓢地園が唯一 取り上げられ、本サイトですでに紹介している東京国立博物館蔵の「墨江山水図額」 などが 展示されている。http://noritake.yi-web.ne.jp/collection/etc/u.html 参照 またその東京錦窯について解説されているのがオールドノリタケファン にとって嬉しく思う。 因みに瓢地園の河原徳立は1900年に開催されたパリ万博で陶磁器部門の審査官を務め ている。 また、染色や綴織では川島甚兵衛(二代)の慈悲観音図綴織額、壮大な百花百鳥図の 綴織とその下絵の双方の展示は実に見事という他はない。躍動感あふれる大鶏雌雄図 綴織や 紫陽花双鶏図の室内装飾壁画は展示直後すぐに宮内庁に買い上げられたのも容易に理 解できる。 明治宮殿東溜りの間に掛けられた室内装飾の綴織の戦災での一部焼失は残念でならな い。 |
慈悲観音図綴織額 川島甚兵衛(二代) |
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この特別展は国内外の第一級の美術館、博物館などの逸品が出展されている。以下が
主な出展先である。
東京国立博物館、オルセー美術館、セーブル国立陶磁美術館、メトロポリタン美術
館、
フィラデルフィア美術館、ベルサイユ宮殿国立美術館、フランス国立図書館、リヨン
美術館、
川島織物文化館、東京芸大美術館、オーストリア応用美術館、ビクトリア&アルバー
ト美術館、
ハンブルク装飾美術館、宮内庁三の丸尚蔵館、リンデン民族博物館、ルーアン美術
館、
ボルドー美術館、ナンシー美術館、北澤美術館、ロダン美術館、愛知県陶磁資料館、
石川県立美術館 他多数。
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信点翁の大鉢 ショワジー・ル・ロワ社 |
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主催の大阪市立美術館の館蔵品が殆どなかったことがやはり残念である。 利用した大阪市営の2500円の駐車料金が恐ろしく異常に高く思えるくらい素晴らしい 展示内容であった。 大いなる税金の無駄使いと過剰な人件費をこのような美術工芸や文化遺産に回せば、 少しは世界中から名作を掻き集める必要もなかろう。 90%以上海外に流出している浮世絵をはじめ、いかに私たちは自国のかけがえのない 貴重な文化遺産を海外に手放してきたことであろうか。 上記の世界中の美術館や博物館がそれを物語っている。 |
ヴィーナスの誕生 アレクサンドル・カバネル (オルセー美術館蔵) |
大阪展・・・・・2004年 10月15日〜11月28日 名古屋展・・・2005年 1月5日〜3月6日 大阪市立美術館・・・・・大阪市天王寺区茶臼山町 (天王寺公園内) 観覧料・・・・・ 一般 1300円 高大生・・・900円 開館時間・・・ 午前9時30分〜午後5時 休館日・・・・・ 月曜日 主催・・・・・東京国立博物館、大阪市立美術館、名古屋市博物館、NHK、日経新 聞社 共催・・・・・財団法人2005年日本国際博覧会協会 後援・・・・・経済産業省、文化庁 協賛・・・・・トヨタ自動車、王子製紙、他 協力・・・・・川島織物、電通、日本航空 他 |
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