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  『Removal Notice ・・・・・百年の歴史を越えて』
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鮮やかなこの一枚の錦絵に日米貿易のルーツと歴史が見事に集約されていると言えば過言であろうか?

そもそも日米貿易のはじまりは(株)ノリタケカンパニーの前身、森村組によってその端緒が開かれている。貿易立国の礎の大きな一歩を築いたわけであるが、この錦絵はこれを如実に物語る我国の貿易史上、第一級の歴史的資料と言えよう。

幸いにも2点目を入手できたので、1つをノリタケミュージアムに寄贈した。この4月5日から愛知県陶磁資料館ではじまる 『土と炎の世紀 ー ノリタケチャイナと製陶王国の100年史展』 に展示されることになり、またその展覧会のパンフレットの表紙を飾ることになった。

 

 この錦絵は1902年の森村組ニューヨーク支店(店名を森村ブラザーズ)の移転通知Removal Notice(closing out sale)である。1876年、ニューヨーク6番街の日の出商会の設立に始まる森村ブラザーズは飛躍的な売上の増加と事業の拡大に伴い、この錦絵の1902年までに7度の移転が確認されている。しかしながら、1894年にブロードウェイ538番館に移転しているが、537番館と539番館は日本陶器七十年史にも載っていない。新たな史実である。

 

それにしても実にユニークな着想である。港の桟橋に停泊するアメリカの商船に向かって、花瓶やポットなどの頭をした侍たちがマルキ印のついた荷台や旗とともにまるでパレードのように行進している。そこには貿易立国による殖産と振興への溢れんばかりの情熱と我国の経済発展への源泉が自ずと伝わってくる。物を創ることを忘れかけた我国の産業界に警笛を鳴らし、自戒をこめて100年後の我々に当時のエネルギッシュなメッセージを伝えているような気がする。 

 この錦絵は大倉書店や洋紙問屋を経営する森村市左衛門の義弟である大倉孫兵衛のもとで制作されたものにまず間違いなかろう。彼は広重などの浮世絵や大日本物産図会などの錦絵、開明東京新図などの歴史的地図、そして絵付けの下敷きになり得る画集などを数多く出版しており、それらの作品の中には自ら『画工孫兵衛』と名乗っているものもある。

前述のマルキ印であるが、これはスパイダーマークともいわれ困難の『困』に由来し、困難を乗り越え物事が円く収まるように□を○に図案化し1900年頃より使用され始めた裏印で、戦前の裏印の中で最も長く使用された言わば森村組、日本陶器を代表するマークである。この裏因が示すように、森村組は筆舌に尽くしがたい千辛万苦を乗り越え、見事に今日の製陶王国を築いたのである。 

 

尚、愛知県陶磁資料館ではじまる 『土と炎の世紀 ー ノリタケチャイナと製陶王国の100年史展』 は本館第1,2展示室、特別展示室にて来る4月5日(土)〜6月8日まで。開館時間は午前9時30分〜午後4時30分(入館は4時まで)休館日は月曜日。入館料は大人600円、高大生500円、小中学生300円となっています。



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